2011年4月25日月曜日

講演会「核(原子力)と人類は共存できるのか?」at 札幌 2010年4月10日(土) 今私たちが知っておかなければならない、核・原子力の真実 京都大学・原子炉実験所 小出 裕章

##なかなか非常に面白い!!!##

今私たちが知っておかなければならない、核・原子力の真実

厖大な温廃水
今日 100万 kW と呼ばれる原子力発電所が標準的になりましたが、その原子炉の中では300 万 kW 分の熱が出ています。その 300 万kW 分の熱のうちの 100 万 kW を電気にしているだけであって、残りの 200 万 kW は海に捨てています(図 23 参照)。私が原子力について勉強を始めた頃、当時、東大の助教授をしていた水戸巌さんが私に「『原子力発電所』と言う呼び方は正しくない。あれは正しく言うなら『海温め装置』だ」と教えてくれました。300 万 kW のエネルギーを出して 200 万 kW は海を暖めている、残りの僅か 3 分の 1 を電気にしているだけなのですから、メインの仕事は海温めです。そういうものを発電所と呼ぶこと自体が間違いです。
その上、海を温めるということは海から見れば実に迷惑なことです。海には海の生態系があって、そこに適したたくさんの生物が生きています。100 万 kW の原子力発電所の場合、1 秒間に 70 トンの海水の温度を 7 度上げます。石狩川は日本最多の流量を誇る大河ですが、その年平均流量は 1 秒間に 454 トンです(理科年表)。日本全体でも、1 秒間に 70 トンの流量を超える川は 30 に満ちません。原子力発電所を造るということは、その敷地に忽然として暖かい川を出現させることになります。また、7度の温度上昇が如何に破滅的かは、入浴時のお湯の温度を考えれば分かるでしょう。皆さんが普段入っている風呂の温度を7度上げてしまえば、決して入れないはずです。しかし、それぞれの海には、その環境を好む生物が生きています。その生物たちからみれば、海は入浴時に入るのではなく、四六時中そこで生活する場です。その温度が7度も上がってしまえば、その場で生きられません。
日本というこの国が国家として「美しい」とは思えませんが、気候に恵まれた、得がたい生命環境だと私は思います。たとえば、雨は地球の生態系を持続させる上で決定的に重要なものですが、日本の降水量は平均で 1700mm/年を越え、世界でも雨の恵みを受けている貴重な国の一つです。国土全体では毎年 6500 億トン近い雨水を受けています。それによって豊かな森林が育ち、長期にわたって稲作が持続的に可能になってきました。また、日本の河川の総流量は約 4000 億トンです。一方、現在日本には54 基、電気出力で約 4900 万kW の原子力発電所があり、それが流す温排水の総量は1年間に 1000億トンに達します。日本の全河川の流量に換算すれば約2度も暖かくしていることになり、これで温暖化しなければ、その方が不思議です。
もちろん日本には原子力発電所を上回る火力発電所が稼動していて、それらも冷却水として海水を使っています。しかし、現在の原子力発電所は、燃料の健全性の制約からタービンに送る蒸気温度を高々280℃までしか上げることができず、発電の熱効率は約 33%でしかありません。一方、最近の火力発電所では、500 度を超える高温の蒸気を利用できるようになり、発電の熱効率は 50%を超えています。つまり、海に捨てるエネルギーは、化石燃料を燃やしてでてきたエネルギーの半分以下で済みます。もし原子力から火力に転換することができれば、それだけで海に捨てる熱をはるかに少なく済ませることができます。その上、火力発電所を都会に建ててコジェネを使えば、総合のエネルギー効率を 80%にすることも可能です。しかし、原子力発電所は都会に建てられず、この点でも原子力は失格です。

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